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2018年2月、日本政府が中央銀行発行の仮想通貨「e-円」について検討しているという発言をしたと話題になりました。
下記がその内容です。
世界各国で自国のデジタル通貨の発行が研究・検討されている中、日本円のデジタル通貨発行に関する質問主意書を安倍内閣に提出し、本日答弁書を頂戴しました。
閣議決定を経て安倍晋三首相名の答弁の中に、日本政府として中央銀行によるデジタル通貨を発行する可能性について検討してまいりたいという答弁が返って参りましたので、皆様にもご報告させていただきます。
引用:BLOGOS「日本政府、デジタル通貨(e円)発行の検討を明言。」
これに関して、様々な情報媒体がe-円発行の可能性について言及しています。
今回はこれらの情報をまとめつつ、本当に「e-円」が誕生する可能性があるのか、またそのメリットについて考えてみたいと思います。
仮想通貨「e-円」誕生のメリット・デメリット
当ブログの私が書いた記事では、仮想通貨を説明する際に「法定通貨」と「仮想通貨」という分け方で説明してきました。
その理由は、その立ち位置が比較対象として非常にわかりやすかったからです。
「e-円」が発行されれば、「法定通貨」「仮想通貨」それぞれの特色を持った新しい通貨が誕生するということになります。
これは両者の「良いとこどり」できるという側面もありますが、同時に新たなデメリットも生む可能性も危惧されています。
メリット① e-円は、国という信用担保を持つ
仮想通貨投資をしていれば、仮想通貨の価格高騰に「通貨への信頼」が大きく影響することはご存知の方も多いと思います。
理由は簡単で、信用が高い仮想通貨は多くのサービスで使われる可能性が高く、実際の需要を大きくなります。
需要が増えればその通貨を欲しい人が多くなり、価格も上昇します。
おそらく「e-円」が発行された場合、国がどんどん「e-円」を使える場所を増やしていくでしょう。
使える場所が多いというのは、仮想通貨にとって最も大きなアドバンテージです。
メリット② 法定通貨のデメリットを解消できる
仮想通貨が誕生したのは、既存の法定通貨に対するデメリットを解決できるのではないかと考えた人が多かったからです。
「送金手数料が高い」
「海外に行った時に換金する必要性がある」
「クレジットカードなどを作らなければネット決済ができないサービスが多い」
現存の法定通貨では、こういった次世代の需要を満たすのは難しいと考えたんですね。
仮想通貨は、ブロックチェーンを始めとする様々な技術を使う事でこれらのデメリットを解消しています。
もし「e-円」が発行されれば「法定通貨のデメリット」を「仮想通貨の解決法」で解消できる可能性があります。
デメリット① 「e-円」は中央集権的な仮想通貨である
仮想通貨のもっとも大きなメリットは「非中央集権的」なデジタル通貨であるということです。
管理者ではなく利用者同士で信用を担保して、通貨の権力が一か所に集中しないようになっています。
しかし、「e-円」は誕生した時から国家という中心的な存在がいる「中央集権的」なデジタル通貨。
本質的に仮想通貨が目指したものとは違い、おそらく使われる方法も他の仮想通貨とは違ったものになるでしょう。
デメリット② 「e-円」は海外でつかえるの?
「e-円」は日本が発行する法定の仮想通貨です。
通貨に国籍があるため、海外のサービスが「e-円」を取り扱うまでにかなりの時間がかかると思います。
考えられるのは日本人渡航者をターゲットにして商売をしている国や、ASEANに加盟している友好国などです。
しかし、これらの国が「e-円」での売買を受け入れるのは、日本で「e-円」が普及した後の話になると思います。
そもそも、「e-円」が海外で利用できない可能性すらあります。
中央集権的な仮想通貨である「e-円」は、そういった政治的な制限がかかる可能性を大いに秘めています。
「e-円」が誕生する可能性は?
「日本政府としてデジタル通貨に対してどう考えているか」
「メリット・デメリットの研究をすべきではないか?」
これらの質疑に対して、安倍首相の答弁は下記のようなものになります。
ー通貨の在り方については、当該通貨を使用する国民の利便性及び決済の安全性や、当該通貨を発行することによる金融システムへの影響等について考慮する必要があると考えており、こうした観点から、引き続き検討してまいりたい。
引用:BLOGOS「日本政府、デジタル通貨(e円)発行の検討を明言。」
これを見る限り、日本政府としては他の金融システムとのバランスを見ながら「e-円」について検討していくようです。
ただし、国家発行の仮想通貨についての言及はありません。
また「仮想通貨を国が発行するコストや、現状よりどれくらい効率化できるのか調査すべきではないか?」という問いに関しては「現状ではそのような調査を行う予定はない」としています。
この答弁をみると、今の段階で、国家発行の仮想通貨が誕生する可能性は非常に低いように感じます。
実際に仮想通貨を発行した国や、検討している国
先日、ベネズエラが世界で初めて国家発行の仮想通貨が誕生しました。
「e-円」の誕生には、こういった諸外国の仮想通貨状況も大きく影響してきます。
ベネズエラが世界で初めての法定仮想通貨「ペトロ」を発行
世界初となる国家発行の仮想通貨はベネズエラが発行しました。
「ペトロ」と名付けられたこの法定仮想通貨は、石油と政府を裏付けとし、最大20億ドルの資金調達を目的としています。
1日で7億の資金調達を果たし、順調な滑り出しかと思われた「ペトロ」でしたが、評判は良くありません。
その大きな理由は、現マドゥロ政権の不信感によるところが大きいです。
石油が豊富に採れ、一時期は世界一の富裕国とも言われたベネズエラでしたが、現在は石油の産地が増えて輸出量が落ち込み、インフレ上昇率が5000%とほぼ経済破綻している状況です。
石油と政府の信用を裏付けとしている「ペトロ」は、海外投資家からの信用はほとんどありません。
スウェーデン、法定仮想通貨「eクローナ」発行を検討中
2017年3月、世界最古の中央銀行と呼ばれる、スウェーデンのリクスバンクが法定仮想通貨「e-クローナ」のプロセスを発表しました。
プロセスは3段階に分かれており、このプロジェクトの指揮をとっているのはスキングレー副総裁です。
ノルウェーなどの北欧の中央銀行と提携してプロジェクトを進めていくと報告されています。
リスクバンクは2018年に「e-クローナ」発行の判断をすると言われており、はじめてのモデルケースになるのではないかと期待が持たれています。
まとめ
今回は国が発行する法定仮想通貨についてまとめてきましたがいかがだったでしょうか。
上記に挙げた国以外には、イギリス、中国、ロシア、エストニアなどが法定仮想通貨を研究中としています。
しかし、世界最初の法定仮想通貨「ペトロ」が決して成功したとは言えない現状や、安倍首相の発言をみていると、まだまだ「e-円」が発行される可能性は低そうですね。個人的にはスウェーデンや、経済的に豊かな国が法定仮想通貨のモデルケースを確立して、多くの国でデジタル通貨が発行されるようになってほしいと思っています。
法定仮想通貨が国策として有益だとわかれば、仮想通貨に対するイメージも少しは変わる気がします。