このニュースを三行で解説↓
- Frances Coppola氏がライトニングネットワークの問題点を2つ指摘。
- 一つ目は、ライトニングネットワーク上にある程度の残高を確保しなければならないこと
- 二つ目は、人々がチャネルに資金を移すタイミングがバラバラでバランスを保てないこと
※Frances Coppola氏=長年金融に携わるIT分野で働いこられた人物。
※ライトニングネットワーク=ブロックチェーンの外(オフチェーン)で処理を行う事でBitcoinのトランザクションを円滑に行う為の技術(下記リンクに詳細があります。)
ライト二ングネットワークはスケーラビリティ問題の解決策には成り得ない
ソース元 https://www.coindesk.com/lightning-network-may-not-solve-bitcoins-scaling-trilemma/
Frances Coppola氏が、Bitcoinについて下記のように語られました。
Bitcoinは「P2Pの電子現金システム」というナカモトサトシの本来のビジョンから大きく逸脱し、拡大する需要に対応できないことが証明されたと感じている。
Bitcoinは伝統的な金融システムを使用することなく、迅速かつ安全で安価な支払い手段を提供することを目的としていた。しかし現在はVisaやMastercardなどのトラフィックのうち、ごくわずかな部分しか管理していないのにも関わらず、非常に遅くて手数料は高騰している。
Bitcoinのスケーラビリティ問題(利用者が増えることで処理速度が遅くなる問題)を解決することは、利用者や開発者達の関心を集めている。しかし、この問題解決は非常に難しいのでは無いかと感じている。
現状から言えば、Bitcoinは金に近い。2100万というBitcoinの制限は、金に似たファイナンシャル・システムの理想的な後継者とも言える。新しい支払いシステムをその上に構築することができるからだ。
問題は「完全な地方分権」、「固定された資金供給」、「効率的な支払いシステムのための十分な流動性を持つことが出来ない」ということだ。これはBitcoinの「トリレンマ(3つのジレンマがあって、どれかを解決するにはどれかを犠牲にしなければならないというような状態のこと)」と言えるだろう。
不動のお金
従来の金では、Bitcoinのようなトリレンマは無かった。
例えば、19世紀の古典的な金の価値基準は、世界の3分の1の金を保有していた大英帝国によって発行されるポンドが、金に裏付けされた価値が保証される国際貿易の通貨だった。
大英帝国は、英国政府によって金を基準とする取引を強制された。帝国外の国々も貿易の利便性を高める事を目的に、金本位制に加入したり、通貨としてポンドを採用したりした。
そして、金とポンドの発行価格は、イングランド銀行によって管理され、それはローマ帝国以来、最も集中的な金融システムとして機能していた。
しかしBitcoinの場合、非中央集権型で設計されている為、中央組織ではない、なにか他のものが価値を与えなければならない。そして、現状では急速に上昇する価格がその価値となっているが、皮肉にも急速に上昇する価格、及び、一時的に下落しても今後価格上昇が起こるのではないかという期待が高まる事により、Bitcoinの流動性は低下している。
つまり、価格上昇が期待できるから買いたいという人々が増える一方、既にBitcoinを所有している人たちも、価格上昇への期待から手放そうとしない傾向が強まっている。
これは、通貨としての本来の目的とは大幅にズレてしまっており、投資対象として購入する量が、Bitcoinで行う決済量を大きく上回ってしまっている事を意味している。
そして、Bitcoinの採掘はまだ続いているが、採掘できるBTCはほとんど残されておらず、採掘することによりBitcoinの供給量が増加しても、流動性が高まる事は期待できないのではないかと思う。更に、トランザクション量の増加はネットワークの混雑を引き起こし、「取引手数料の高騰」と「決済時間の遅延」を引き起こしている。
では、このような問題を解決して、Bitcoinが本来の通貨としての流動性を取り戻す事はできるのでしょうか?
その問題の解決策となり得るのが、ライト二ングネットワーク(ブロックチェーンの外でコインを管理・実行する「ペイメントチャネル」という仕組みを利用した送金の考え方)であり、ライトニングネットワークを研究する彼らが考える解決策は、ほとんどの取引をオフチェーンで行い、ネットワーク全体で流動性を共有していくことだ。
供給不足を解消するためにライトニングネットワークに求められるもの
ライトニングネットワークは、Bitcoinのブロックチェーンよりも高速で安価でなければならない。
現在、Bitcoinのブロックチェーン上で行われている膨大な取り引きを、ライトニングネットワークでオフチェーン処理をする事になるが、これは、結局はネットワーク全体に分散した膨大なBitcoinの流動性プールが存在することになる。・・・問題はそれを共有する方法だ。
ライト二ングネットワークの開発者は、どのネットワークノードが支払いを行うのに十分な資金を持っているかを特定し、それらのノード間で支払い先までの最短実行可能ルートを計算し、送信するルーティン機能を設計している。これが上手くいくと、Bitcoinの抱える「トリレンマ」が解決されることになる。
しかし、これが上手くいくかどうかはわからない。なぜならこの解決策にもまた、2つの問題があるからだ。
1つ目はライト二ングネットワークの事前資金提供チャネルが、他の目的に使用できる資金を賄っていることだ。これによって人々は残高調整を頻繁に行わなければならず、ライト二ングネットワークにある程度の残高を保っておく必要がある。
2つ目はチャネルの資金が絶えず変化していることだ。人々は現実的な付き合いや仕事上の仲間ではない。チャネルへ資金提供するタイミングはバラバラで、そのバランスは徐々に崩れていく。資金を集めた直後はバランスが取れるが、数日間のうちに残高がかなり減少する可能性もある。
多くの人がほぼ同時に資金を提供している場合(例えば給料日に資金を調達し、翌月に支払う場合など)、ネットワーク全体の流動性はかなり異なる可能性がある。これは大きな支払いを行う時に、その方法が見つからない、または不可能であることを意味している。
それゆえライト二ングネットワークもまた、Bitcoinと同じように流動性を高める事はできないのだ。
ライト二ングネットワークの非流動性の問題を解決するには、オープンで完全な資金供給を受ける大型決済チャネルを作成する必要がある。しかしこれはライトニングネットワークが分散化されていないことを意味する。
また、このような「ハブ」チャネルは支払いには効率的だが、犯罪者を集める磁石でもあり、ネットワークの弱点だ。1つでもダウンすれば、犯罪的な支払いが蔓延する可能性すらある。
ライト二ングネットワークはまだ準備段階だ。現時点では、Bitcoinトリレンマの完全な解消法は未発見であり、それを見つけ出すことが最も重要な課題と言える。